―――。 *NO,137...Lost Angel* 気付けば独り、夢を観ていた。 それは私の夢でも仲間達の夢でもなく――彼女の‘記憶’。 『私に出来るの?』 不安気に呟いた少女の隣で笑うのは、穏やかな笑顔を浮かべたロストだった。姿は人間だけど、彼女の人間姿は心龍に会った時見たから、まず 間違いない。 ロストの隣。少女の頭を優しく撫でた‘男’が、笑う。 『大丈夫だよ』 隣にロストが居るって事は、今目の前で笑ってる男は――心龍? 心龍と思われる男に、何故か見覚えを感じる。どうしてだろう。あたし達が出会った心龍は、龍の姿をしていたのに。 『じゃあ、頑張る』 そう言って微笑んだ少女は踵を返すとあたしを擦り抜けて、一目散に扉へ掛けていった。 ――此処はきっと‘彼女’の記憶の海。 だからあたしは客観的にこの場所を見ているけど、この記憶はきっと相当古いもので、そしてあたしはこの場に居ない事になっている。 擦り抜けて行った少女の方を振り返った。少女はまさに今部屋の扉を閉め、外へ出て行った所だ。 ――あたしは、あの子を知っている。 ライカから少しだけ聞いた。心龍から確かな話を聞いた。 あの子は、そう。最初のウルフドール族。 ――心龍に‘世界の調和’を任された幻獣。 3番目に生まれたノルベルトが生きているんだから、最初に生まれた彼女が生きていても可笑しくない。シルスティアが死んだのは元々事故だ。 『大丈夫かしら、あの子』 部屋を出て行った少女を心配するロストに、男は刹那優しい笑顔を浮かべた。 『大丈夫だよ、ヘレンなら』 ――記憶の海を抜けた先。何も無い空間には彼女と私だけが居た。 蹲り、顔を伏せている彼女から表情は読み取れない。 ああ、きっと思い出したのだろう。自分に任された本当の任務。最初に目指していたモノを。 「…私、言うとおりにしてた筈だった……」 「…そうね」 「自分が信じた道を進んで…自分が歪んだ道に走った事も…分からなかった……」 「……」 蹲り、懺悔を呟く彼女の声は余りにも弱い。 目の前に座って、幼子の様に震える彼女を優しく抱き締めた。 きっと彼女は、愛されたかっただけなんだ。 親である心龍に。自分を認めて欲しかった。 だから与えられた義務―世界を見守ること―に過剰になってしまった。その勢いは留まらず、やがて彼女を歪んだ想いへ立たせてしまった。 本当に悪い人間なんて、きっと居ない。 「…大丈夫。きっと分かってくれる」 穏やかに語りかければ、彼女は頬を濡らして肩を小刻みに震わせた。 そうして光が私達を包む―――。 BACK MAIN NEXT |