森の中を全速力で走り抜け、何とか街まで戻ってくる。
とりあえずロア達を探そうと思ったのだが、何やら街の様子が可笑しかった。何か慌てているような…?
気に掛かったので近くの人を呼び止めてみる。
「何か合ったの?」
「――鉱山の方で土砂崩れが合ったらしいんだ。怪我人もかなり居るらしくてな」
それを聞いて真っ先に理解した。ロア達はきっと其処にいる筈だ。
唯…最初に依頼人に薬を渡しに行かなくては。
依頼人は体が弱いって言ってたから多分まだ家に居る筈。それに薬が無くて結構困ってたみたいだし。
ロア達の方も心配だったが先に依頼人の方に行こう。そう決めたイヴは再び街の中を走り出した。


*NO,47...medicine*


――同時刻――
まだまだ現場は荒れているが、ほとんどの怪我人は救出出来た様だ。流石に疲れたのでマロンの傍に座った。マロンの方も回復術の使い過ぎで
疲れたのか今は休憩している。
「リネは?」
ロアの問いにマロンが振り向いて答えた。
「一応傷の手当はしたよ。唯寝ちゃったみたいで…」
「……そ、か」
立ち上がり、リネが寝てるテントの方を覗いて見る。確かに彼女からは規則正しい寝息が聞こえた。どうやら疲れている様だ。
唯何時までも此処に置いておく訳には行かない。まだ奥で取り残されている人が救助された時、少しでもテントは空けて置くべきだろう。
「とりあえずマロンの家まで連れてった方が良いよな」
「うーん…。そうだね」
椅子に座っている彼女に問い掛けると、少し悩んでから彼女は頷いた。
とりあえず寝てるリネを起こさない様に抱え上げ、テントを出る。
するとレイン達と目が合った。2人にはリネが来てる事を伝えていなかったので驚いた顔をしてこっちにやって来る。
「リネ?!」
走って来た2人が驚いた顔でリネの顔を覗き込んだ。相変わらず彼女はぐっすりと眠っている。
「…事情は良く分からない。とりあえずマロンの家まで連れてこうと思う」
「……そうね。疲れてるみたいだし、その方が良いかも」
その言葉にアシュリーとレインが同時に頷いた。それから後で事情を聞いたら教えると2人に約束してからマロンと一緒に彼女の家に向かって歩き
出す。――彼女の家の鍵は彼女とイヴしか持って居ないからどっちかに着いてきてもらう必要があるのだ。
鉱山を少し離れた曲がり角で、ブロンドの靡く髪が見える。
「――イヴ?」
「…ロアにマロン。……と、リネ…?」
向こうの道から走ってきたのは、やはりイヴだった。彼女は自分達の前で足を止め、リネの顔を覗き込む。やはり皆思うことは一緒みたいだ。
「何でリネが此処に?SAINT ARTS本部に帰ったんじゃないの??」
息を切らしながら彼女が問い掛ける。――此処まで走って来たようだ。其処まで急がなくても良かったのにと思いながらも問いに答える。
「その辺はまだ分からない。此処に来るが疲れてるのか寝ちまったからな」
「とりあえず私の家で寝かせようと思って」
「…成る程ね」
彼女が納得したところで、3人でマロンの家に向かって歩き出す。

「依頼人に薬は渡したのか?」
「今渡してきた。報酬もちゃんと貰ってる」
ロアの問いにイヴがポケットから袋を出して答える。恐らくその袋の中に報酬が入っているのだろう。彼女は一度見せてから再びポケットにお金をし
まった。
それからイヴが回りをぐるりと見回して、2人に問い掛ける。
「レインとアシュリーは?一緒じゃないの?」
「まだ鉱山前で手伝いしてるよ」
その問いにはマロンが答えた。彼女はその言葉に少し悩んだ顔をみせてから一度立ち止まって言葉を投げる。
「じゃああたしそっちの方言って来る。まだ手伝いが居るでしょ?」
確かにその方が良いだろう。まだまだ人手は足りなさそうだったし、レインとアシュリーもまだ頑張ってる。
ロアとマロンが同時に頷くと、彼女は鉱山の方に向け再び走り出した。よくあんなに走れるなと少しだけ関心しつつも苦笑する。

それから細い道など少し近道を通ってマロンの家まで無事に辿り着いた。
彼女が扉の鍵を開けてくれたので中に入る。
とりあえず彼女の部屋のベッドに寝かせる事になったので奥の部屋に踏み入れた。彼女の部屋に入り、ベッドにリネを寝かせる。
顔色は大分良くなっているが…まだ当分起きそうにも無い。だが万が一起きた時の為にもどっちかが残ったほうが良いだろう。
「俺鉱山の方に戻るから、マロンがリネ見ててくれないか?」
「うん、分かった」
ロアの言葉に彼女が笑顔で頷く。――リネの事は彼女に任せ、部屋を出て扉を閉めた。
とりあえずリネから話を聞くのは鉱山の騒動が治まってからだ。まずは鉱山の方をどうにかしなくては。
そう思いつつ家を出て、鉱山まで走り出す。
ところでイヴの帰りが遅かった気もするが…何か合ったのだろうか?
また後で聞いてみようと思いつつ、今来た道を走り抜けた。


* * *


鉱山の方に行くと、確かにレインとアシュリーの姿が見えた。
とりあえずレイン達の方に走り寄ると2人も此方に気づいた様でレインが軽く手を振ってくる。
「おかえり、遅かったわね?」
「ちょっと色々合ってね。後で説明するわ。――で、何か手伝う事ある?」
流石に走りすぎて体が温まっているので手で軽く仰ぎながら問い掛ける。その問いにレインとアシュリーが少し悩んだ顔を見せてから――鉱山の
中を指差した。
「多分もう力仕事しか残ってねえぞ?」
「…たとえば、どんな?」
深く追求すると2人は更に顔を見合わせ――少し苦笑して答える。
「鉱山の土砂崩し。中にまだ閉じ込められてる人が居るらしいから」
「…ホントに肉体労働ね」
ため息を吐いて土砂崩れの起きた鉱山の中の方を見た。確かに人手が足りないらしく余ってる人を探す声が先程から響いている。唯皆疲れている
のか動く人は少ない。
2人は何をしてたのかと聞こうとしたが多分2人も肉体労働手伝ってたんだろう。アシュリーはウルフドール族だから腕力あるだろうし、レインも男だ
から自分より数倍は力量が在るだろう。
此処まで走ってくるんじゃなかったと少し後悔しながら、仕方なく土砂崩し作業を手伝う事にした。
入り口付近に居る警備員に話し掛け、手伝う意思を伝えてから鉱山の中に入る。
地道に土砂崩しを手伝っていると、遅れてロアが顔を覗かせた。
「遅かったじゃない」
「これでも走ったっつーの」
皮肉を言ってやると苦笑気味にロアが返してくる。どうやらマロンはリネの看病に残ったみたいだ。彼女の姿は見えない。
でもはっきり言ってマロンは来ないで正解な気がする。応急手当の人数はもう足りてるみたいだし手伝える仕事で残ってるのといったらこの土砂崩
しぐらいだ。体が弱いから無理な事はして欲しくないし、家に残ってくれて良かったとちょっとほっとした。
「リネは?まだ寝てるの??」
「多分」
土砂崩し作業を手伝いながらロアに問い掛けると、彼が小さく頷いた。尚も問いを続ける。
「セルシアは?一緒じゃなかった??」
「…俺が探した限りじゃ居なかった。だから多分一緒じゃない」
「……ふうん?」
――頭に何かが引っかかる。
確かにセルシアはVONOS DISE副リーダーだし、此方に来る暇が無い程忙しいのかもしれないが……どうしても何かが気になった。
そして怪我を負っていたというリネ…。どうして怪我をしていたのだろう。




「…また厄介ごと、っぽいわよね……」
どう考えも厄介ごとだ。リネの傷と良い、この胸騒ぎと良い…。
気のせいである事を願いつつ、土砂崩し作業を続けた。



* * *



「……っ…」
小さく彼女が声を上げる。閉じられていた瞼が静かに空気に触れた。
「あ、リネ。起きたんだね。大丈夫?」
目を覚ました彼女に、マロンが不安気味に問い掛ける。
その問いに体を起こしながらリネが少し頷いた。

「…此処…あんたの家……?」
「あ、うん。そうだよ」
「……イヴ達は?」
「鉱山で土砂崩れが起きて、今そっちの手伝いに行ってるの」
「…そう」
小さく肯定の返事を返し、彼女が当たりを見回す。まだ体調が優れないのか、寝起きだからなのかは分からないが目が少し虚ろだ。
だが暫くして少しずつ目が開いてきた。
大分意識が覚醒してきた頃に、彼女がマロンの肩を掴む。

「此処数日。誰か尋ねて来なかった?!」
「えっ…?!…多分、尋ねてきてないよ?」
突然肩を掴まれ驚いた彼女が体を痙攣させつつリネの問いに答える。
その言葉に彼女が安堵した様にため息を吐き、そしてマロンの肩から手を離した。
大分落ち着いたみたいなので、改めて問い掛けてみる。

「何が合ったの…?」
「……ホントは全員に話した方が良いんだけどね」
そう言ってリネが此方を見る。その瞳は至って真剣だ。

「数日前。あたしはクライステリア第一神殿の調査を依頼されたの。…場所は分かるわよね?」
「隣町から少し歩いた場所にある神殿だよね。分かるよ」
SAINT ARTSの一員を捜し求めて行った神殿だ。――リネが調査依頼されたのはあの場所に違いないだろう。
大きく頷くと、彼女は更に言葉を続けた。
「其処を調べている途中、あたしに尋ねて来た奴が居た。水髪の男と、桃色の髪の女の2人組。
そいつ等にあたしはある事を聞かれたのよ。そして答えるのを拒絶した為に攻撃された――」
…つまり、今彼女の言った‘2人組’が、リネを襲った犯人――。
少しだけ息を飲んで彼女に問い掛ける。

「その質問…って?」
「……」
一瞬沈黙したリネが、目を逸らして言葉を続けた。


「――イヴ達の居場所。
…多分あいつ等、イヴとセルシアのネメシスの石を狙ってるんだと思う」










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