元来た道を戻り、何とか大森林の入口にまで戻ってくる。入口に戻って来ると既にマロンとレインが待機していた。2人の傍に走り寄る。 「ゲルトアース。見つかった?」 イヴの問いに、マロンが笑顔で頷きレインが親指を立てて笑った。この調子だと見つかったようだ。 今度は逆にレインが問い掛けてくる。 「イヴっちとロアは?見つかったのか??」 その問いにロアと2人で顔を見合わせて――大きく頷いた。 *NO,39...回復* とりあえずお互い採取した薬草を確認の為見合わせる。…大丈夫、ちゃんと合ってるみたいだ。 「レイン?お前、その腕どうした??」 マロンと2人で薬草の確認をしている間、辺りをぶらぶらとしているレインにロアが不思議そうに問い掛けた。その言葉に思わず顔を上げてしまう。 気付かなかったけど、右腕の二の腕辺りに止血止めの様な物が撒いてあった。と言うか、少し血液が付着しているところからして完璧止血止め。 「あー、ちょっとヘマした!」 笑いながら回答するレインに、レポートをまとめるイヴが呟く。 「馬鹿じゃないの」 「ひっどーい!イヴっちそういう言い方無いんじゃないー?」 言葉に反応したレインが、眉間に皺を寄せて言った。 「あの、レインは悪くないの。私を庇ってああなって…」 そんな彼をフォローするかの様に、マロンが少し悲しそうに呟く。…そういう事か。納得した。 彼女を庇った為に自分の防御が出来なかったのだろう。傷はマロンが治療したらしく塞がっているみたいだが。 唯2人が歩いて行った道の所々に血の跡みたいなのが残っていたり、地面に落ちている最初に使って居たと思う止血止めの布が完璧な赤に染ま っている所からすると相当酷い怪我だった様だ。…治療したとは言え、本気で平気なのか?? 「ちょっとだけ見直した。怪我大丈夫なの?」 「へーきへーき。そんなに酷い怪我じゃないし」 とは言っているが少し不安になった。地面に血が落ちているという事は此処に来て治療をしていたのだろう。 てことは此処までの距離を血を流して歩いていた訳だ。貧血とか大丈夫なのか?? 「別に心配しなくても本気で平気よ?俺頑丈だし」 「…うん。そうね。そうだったわね。心配した私が馬鹿だったかも」 心配はしたが本人は元気そうだし、これ以上気に掛けても無駄そうだ。 2つの薬草をマロンに預けてその場を立ち上がった。とりあえず薬草は手に入れたのだから帰ろう。早くアシュリー達の所に戻らないと。 歩き出すと、ロアとマロンが直ぐに着いて来る。レインがちょっと遅れて歩き出した。 「えー、酷くないー?俺体張ってマロンちゃん守ったのに」 「さっきの言葉全言撤回。あんたを心配したあたしが馬鹿だった」 これだけ元気に騒げる内は平気に違いない。もう良い。こいつを少しでも労わったあたしが馬鹿だった。 レインの不満の声を背中に聞きながら歩き続ける。 「イヴ…、でもレインが庇ってくれたのはホントだよ?」 マロンがちょっと不安げに言ってきた。 「それは信じるわ。けどコイツ平気そうだしほかっといても大丈夫でしょ」 彼女の問いに言葉を返して、レポート片手にひたすら歩く。 苦笑のマロンが横にやってきた。後ろではロアとレインが何やら2人で会話をしている為だろう。 暫く道なりに道を歩き続け――大体17,8分位でアシュリー達の居る場所まで戻って来れた。 「お帰り。遅かったね?」 近くの木に凭れ虚空を見ていたセルシアが此方に気付くが駆け寄ってくる。 「ちょっと色々合ってね。…リネとアシュリーは?」 「向こうに居るよ」 セルシアがそう言って横を指差した。彼が指差した先に、まだ横になっているアシュリーとその傍でレポートを捲るリネが居る。 ゲルトアースとシャインリースを持って、リネの傍に近付いた。 「……遅かったじゃない?」 「リネ、あんた薬草の採取場所分かっていて行かなかったでしょ」 「何のこと?」 惚けているが絶対に知っていた筈だ。現に彼女の顔は軽く苦笑が入っている。 …とりあえず追求は後だ。今はアシュリーが優先。 「ゲルトアースとシャンリースよ。コレで合ってるでしょ??」 そう言ってリネの手に2種類の薬草とレポート用紙を載せる。彼女が2種類の薬草を見合わせて、それから小さく頷いた。 「10分もあれば薬出来ると思う。集中力途切れさせたくないから暫く近付かないで」 「…はいはい」 リネの言葉に了承してから、立ち上がって踵を返した。とりあえずリネに追及するのは彼女が薬を調合してからだ。 彼女の傍を離れてから、遠くに居るセルシア達の方に戻る。 「薬草、合ってたのか?」 ロアの問いに頷いて答えた。それから先程リネに言われた事を彼等に伝えてからその場に腰を下ろす。 「ロアから話聞いたよ。…大変だったんだね」 そんな中でセルシアが苦笑してイヴに言葉を投げる。 恐らくシャインリースの採取に着いて言われているのだろう。溜息を吐きながら頷いた。 「でも、これでアシュリーが良くなる訳だし…良かったんじゃないかな」 隣に腰を下ろすマロンが微笑みながら言葉を投げる。…まあ、それはそうだけど。 何度目か分からない溜息を吐きながらも彼女の言葉に頷いた。マロンの言葉には賛成だ。賛成だけど…やっぱりやるせない。 やっぱり採取にリネも連れて行くべきだった。何か腑に落ちない。リネは絶対採取場所が困難だと知っていて行かなかったんだ。 何にせよ約10分間はこのまま待機するしかない。 セルシアとロア達が会話しているのを聞きながら、少しだけ目を閉じた。――ちょっと疲れた。少しくらい寝ても平気、よね?? 崖を上り下りした疲れも合って、ずるずると眠りの世界に引き摺り込まれてしまった。 * * * ――目を開けると、既に当たりは夜だった。 ちょっとうたた寝するつもりだったのだが、何時の間にか爆睡に変わっていた様だ。 体を起こすと、何時の間にか焚き火の傍に移動させられていた事に気付く。 周りを見回すと、隣でマロンがすやすやと寝息を立てて眠っていた。これは相当寝てしまっていた様だ。 そんな中焚き火の向かい側でリネが書物を捲っている。体を起こして、リネの傍に寄った。 「…ああ、起きたの?起こしても起きなかったからそのまま寝かせてたんだけど」 足音に気付いた彼女が書物から一旦目を離し、此方を見ながら言った。 ……一応起こしてくれてはいたみたいだ。好い加減自分の寝相の悪さに飽き飽きしてきた。 「…アシュリーは?もう平気なの?」 「大分平熱に戻ってた。薬も飲ませたし、多分明日には元気になると思う」 リネはそう言って、再び書物に目を落とす。意味の分からない言葉や魔術式が乗っている所からして、恐らく古代の魔術とかなのだろう。 よくそんな本を読む気になるなと思いながら、彼女に問い掛けた。 「改めて聞くけど、絶対に知ってたわよね?シャインリースの採取場所」 「…知らないってば。あれ、受け取った資料だし」 書物から目を離さずに彼女が言葉を返す。少しだけ眉間に皺を寄せている様な気がする。……どう考えても知ってたとしか思えない。 「じゃあ何でロアにロープ渡したのよ」 「必要かなって思っただけよ。何があるか分からないし?」 そう簡単に化けの皮は剥がれてくれ無いか。セルシアだったらこの辺でもうボロを出すのだが流石に彼ほど上手くは行かない。 「じゃあ何でロープしか渡さなかったのよ。他にも色々渡せる物は有ったんじゃないの?」 「…ロープが一番使い道ある道具でしょ。それに、あんまり色々渡したって邪魔になるだけよ」 書物から目を離してリネが此方に言い放ってくる。 もうそろそろ折れてくれそうだな。そんな事を思いながら彼女に問い掛けを続けた。 「使い道あるって、例えばどんな?」 「崖を降りたりとか……ああもう、そうよ。知ってたわよ。知ってたから行かなかったに決まってるでしょ」 遂に彼女の方が折れた。溜息を吐きながらリネが言葉を返してくる。…やっぱり知ってたみたいだ。 「初めに言ってよね。そういうの」 「言ったら取りに行かなかったかもしれないじゃない」 彼女はそう言って、地面に置いてあったカップに注がれた飲み物を口に運ぶ。…恐らく珈琲か何かなのだろう。 「逆に聞くわ。それ聞いて如何すんのよ。非難でもするつもり?」 カップから口を離した彼女が皮肉気に笑いながら問い掛けてくる。 「殴る気ではいたわね」 「…あ、そ」 正直に答えると半ば呆れ顔で彼女が呟いた。 それからカップを地面にもう一度置いて、再び書物に目を通し始める。 これ以上読書の邪魔をしても機嫌を損ねられそうなので、虚空を見上げた。…曇り空が広がっている。月の見えない夜。 近い内に雨が降りそうな天気だった。明日か明後日辺りは雨だろうか。 「…リネ、寝ないの?」 「寝ない。今日あたし見張り当番だから」 淡々と彼女が言葉を返す。…つくづく読書しながら言葉を聞ける彼女が凄いと思ってしまった。 「じゃああたし先に寝るけど、良い?」 問い掛けると、本から目を離してリネが皮肉気に頬を攣り上げる。 「あんたまだ寝る気なの?……まあ止めはしないけどね。おやすみ」 言い返す言葉は無かった。確かにその通りだ。 けれどこのまま起きていてもやる事もないし、リネもまた読書に没頭したいだろうから寝るのが一番なのだ。 「おやすみ、リネ」 彼女に言葉を掛けるが、既に彼女は再び本に目を通し初めている。 集中して読んでいる様なので邪魔をしないよう音を立てずにマロンの隣まで戻った。それからその場に寝転び、シーツを被る。 眠くは無いが目を閉じているだけでも疲れは取れる筈だ。 焚き火の火の音を聞きながら、目を閉じたままじっとしていた。 * * * ――眠った覚えは無いのだが、いつの間にか眠っていた様だ。目を覚ますと朝日が昇り出していた。 二度目の起床をすると、焚き火の傍でセルシアが軽く欠伸をしながら朝食を作っている。その隣でリネが木に凭れながら眠っていた。…あの後彼 女もどうやら眠ってしまった様だ。 起き上がり、辺りを見回す。 「あ、おはよ。イヴ」 こちらに気付いたセルシアが声を掛けてきた。起きているのは彼と――彼の傍で剣の手入れをしているロアぐらいの様だ。 「おはよ、セルシア」 「お前昨日大分寝てたよな。どんだけ寝れば気が済むんだよ」 小さな砥石で刃先を整えながら、ロアが問い掛けてくる。その言葉にロアの傍に寄りながら回答した。 「昨日1回は起きたわよ。嘘だと思うならリネに聞いて」 彼の頭を軽く殴って、セルシアとロアの傍に腰掛る。相変わらずリネに起きる気配は無かった。 「昨日見張り任せたんだけど…寝ちゃったみたい」 リネの方を見ているとセルシアが苦笑気味に話し掛けて来る。 それからその場を立ち上がって、リネの腰辺りに手を掛けて彼女を抱き上げた。 「ちょっとシーツに寝かせてくるから…朝食、見ててもらって良い?」 「分かったわ」 セルシアがまだマロン達が寝ている場所に歩き出すのと同時に、先程彼の座っていた場所に移動して鍋の中を確認する。 上の方に薄く白い湯気が出ていた。お粥…かな?アシュリーの容態を考えると、多分お粥だと思う。 じっと朝食を見てる後ろで、ロアが再び双剣を砥石で砥いでいる。 「あんたは何時起きたのよ」 そんな彼に問い掛けると、振り返りながらロアが答えた。 「1時間くらい前。ぶっちゃけセルシアより先に起きた」 そう言って彼は再び砥石で剣を砥ぎ始める。 暫くその音を聞きながら鍋の上に上がっていく湯気を見つめていると、遠くでセルシアの声が聞こえた。 顔を上げるとセルシアと――体を起こしていたアシュリーがなにやら会話をしている。 傍に行って話を聞きたかったが朝食を見ている様に言われたので後から何を話していたのか聞くことにした。 2人は暫く何かを話してから、セルシアが此方に戻って来る。 「アシュリー、もう平気なの?」 「本人は大丈夫って言ってる。…熱も下がってるみたいだし、平気なんじゃないかな」 彼はそう言ってイヴの隣に座り、木箆で鍋の中身を軽く掻き混ぜる。 それから鍋の傍に置いてあった調味料から塩を取り出して、軽く鍋の中に振りかけた。 「何か手伝う?」 「ううん。平気」 問い掛けるが、セルシアが首を横に振る。 彼は皿の中に少しだけお粥を入れて、味見の為に一口口に含んだ。 それから少し遠くに置いてあった皿を手に取りながら、イヴの方を向いて声を投げる。 「悪いけど、リネ以外の人を起こしてもらってきて良い?」 「リネは良いの?」 「遅くまで起きてた筈だからまだ当分は寝てると思うし……」 「…OK」 セルシアの言葉に頷き、その場を立ち上がる。 それから丁度剣を砥ぎ終わったロアに声を掛け、2人でマロンとレインを起こしに行った。アシュリーは多分起きてると思うから後回しにしよう。話し たい事も有るし。 とりあえず初めにマロンの傍に寄って、彼女の肩を揺すった。 「マロン。朝よ、起きて」 「……んー…」 声を掛けると、彼女が薄く目を開ける。 瞼を擦りながら眠たそうにマロンが目を開けた。 暫くぼーっとしていたが、意識がはっきりしてきたのか体を起こして此方を見る。 「あ、イヴ…。…おはよう」 「おはよ。朝食出来たみたいだからもう起きてて」 「うん、分かった」 彼女は頷いてから両手を前に出して軽く伸びをする。とりあえずマロンは起きてくれたが…問題はレインだ。アイツ、あたし並に寝相悪いからな。 既にロアがレインを起こしに掛かっていたが、全然起きる気配が無い。 立ち上がってレインの傍に寄った。それから彼の腰辺りをつま先で軽く蹴る。 だが軽く寝返りを打っただけで全然起きる気配が無かった。 一発本気で殴ったほうが効果的か? 一呼吸置いてから、彼の背中目掛けて思い切り足を振り上げる。 力強くレインの背中を蹴ると、驚きの顔をしたレインが飛び起きた。よし、起きた。 「……ちょ、イヴっち。乱暴すぎっ…!」 此方を見るがレインが失笑した顔で言う。 そんな事言ったって起きない方が悪い。頭を叩きながらそう言った。 「朝食出来たみてーだからもう起きてろよ?」 背中を摩るレインに、ロアが声を投げる。 とりあえずレインはロアに任せておこう。その場を離れ、反対方向で寝ているアシュリーに近寄った。 彼女は眠たそうに欠伸をしながら、解いた髪の毛を結い直している。 「おはよ、具合はどう?」 そんな彼女に声を掛けて、傍に座った。 「おはよう。…もう大丈夫よ。有難う」 闇色の髪を綺麗に2つ縛りに結いながら、彼女が笑う。 それから足元のシーツを掴んで、綺麗に畳み始めた。…こういう所、マメだなあと思う。 「無理しないでよ?」 「しないわよ。それにホントにもう平気だから」 そう言って少し微笑むアシュリーに釣られて、自分も微笑んだ。 彼女の顔色を伺うが大分良さそうだ。恐らく薬が聞いたのだろう。大変だったけれど、薬草を取りに行って良かった。 セルシアが朝食の準備を終えたらしく、此方に向かって呼び声を掛けて来る。 「行こっ、歩ける?」 「うん」 立ち上がり問い掛けると、彼女が笑顔で頷く。 彼女の肯定の言葉を聞いてから、一緒にセルシアの方に向かって歩き出した。 * * * アシュリーの容態は無事に良くなった様なので、朝食を取ってから暫く休憩の意味も含めて今後に着いてを考えた。 「ザグロス鉱山はまだ危険よね…」 頬杖を付きながら少し遅れて起床したリネが呟く。――結局あの後彼女も煩い余りか目を覚まして起きてきた――。 彼女の言う通りまだザグロス鉱山を通るのは危険な気がする。BLACK SHINEと鉱山で対立してからそんなに日は立っていないし、例えザグロス 鉱山を通過してクオーネに戻れたとしても、肝心のラグレライト洞窟が通れなければ意味が無いのだ。 多分まだ土砂崩しの工事は終わってないのでは無いのだろうか。 「じゃあさ、この先にある港からcross*unionに戻らねー?」 大きく伸びをしながらレインが答えた。…こういう時だけレインが居て良かったと思った。コイツはホントに地理とかに詳しい。 「港から戻れるの?」 「cross*union本部から船が出てるんだから、停めるのだって出来るだろ。…一番安全な道はそれしか無い、か」 イヴの問いにロアが呟くように喋る。一番安全な道…。それは確かに納得できた。 「此処から港町までどの位なんだ?」 レインの隣に座って居るセルシアが、彼の顔を覗き込みながら問い掛ける。 問い掛けられたレインが、首を傾げながら答えた。 「多分ー…半日か1日くらい?だと思うぜ」 「それ位なら今日中で着きそうだな」 その場を立ち上がったロアがレインに言葉を投げる。 「船の手配とかもあるからcross*unionに帰れるのは多分2〜3日後ぐらいかしらね。とりあえず船の手配は早い方が良いからさっさと行きましょ」 ロアに続けて立ち上がったリネが彼に続けて言葉を発した。 確かに到着は早い方が良い。他の4人もその場を立ち上がったので、イヴも少し遅れて立ち上がる。 「じゃあもう行く?」 「そうだね。港まで半日くらいは掛かるし……」 振り返りながら問い掛けると真っ先にマロンが答える。 彼女の言葉にセルシアとアシュリーが頷き、少し遅れてリネとロア、レインが賛成の声を上げた。 全員の意見が一致した所で、港町に向けて歩き出した――。 BACK MAIN NEXT |