自分達だけでのunionの結成。…正直不安ばかりだが、少しだけ楽しそうとも思ってしまった。
出来ればセルシアとリネの2人にも居て欲しいのだが、所属できるunionは1人1つまで。それに2人に無理を言っても申し訳ない。
そんな事を考えながら眠りに着いた、翌日―――。
「ちょっと、イヴ」
珍しくリネに起こされて、薄く目を開けた。


*NO,36...Disease*


彼女は何処か慌てたような顔をしている。…何か合ったのだろうか。
とりあえず体を起こして周りを見てみた。隣でロアがまだ寝ている。唯その隣のマロンの姿が無かった。
何処に居るのかと思えば、アシュリーの傍に居た。唯彼女も少し困ったような焦ったような顔をしている。
「何か合った?」
欠伸をかみ殺しながらリネに問い掛ける。
「アシュリーが熱出した。…イヴ、解熱剤とか持ってないわよね?」
…ああ、そういう事か。
首を横に振りながら、とりあえず立ち上がってアシュリーの傍に寄った。
確かに彼女の顔色が悪い。額に手を当てて、自分の体温と比べてみた。…やっぱり明らかにアシュリーの方が熱い。
「どうにかならない?」
隣に居るマロンに問い掛けるが、マロンは俯いたまま首を横に振った。
「怪我とか傷とかの‘外傷’は治療できるけど…病気とか、体の内部の治療は高度な治癒術だから、覚えてない……」
「…そう」
それならやっぱり誰かが解熱剤を持っているのを祈るしかないだろう。
此処から街まではまだ遠いし、鉱山はまだBLACK SHINEが居るかもしれないから危険すぎる。
全員を起こしたリネが、アシュリーの傍まで戻ってきた。
「解熱剤、合った?」
「駄目。誰も持ってない」
リネがそう言って溜息を吐く。それからアシュリーの顔を覗き込んだ。
「平気?水持ってくる?」
「…ううん」
薄く目を開けた彼女が首を横に振る。それから又瞳を閉じた。
本人も辛そうだし、どうにかしてあげたい気持ちは山々なのだが……。
そんな中ロアとセルシアが心配そうに此方にやってきた。レインはまだ夢の中っぽい。アイツ後で絶対殴る。心の中で固く決めた。
「解熱剤…か。痛み止めなら持ってるんだけどな」
苦い顔をしたセルシアがそう呟く。
…痛み止め、じゃ流石に効かないだろうな。セルシアと同時に溜息を吐いた。


「リネ、この辺に生えてる薬草とかで解毒剤作れないのか?」
そんな中珍しく閃いたロアが彼女にそう言った。
その言葉にリネが少しだけ考え込んだ顔をして――やがて顔を上げる。

「グヴェース大森林って分かる?此処から北に進んだところにある大きな森林なんだけど」
「そこに、材料がある?」
「…ま、完結に言えばそうね」
イヴの言葉にリネが頷いた。
グヴェース大森林…。場所なら多分レインが分かるだろう。
とりあえずまだ寝ているレインの頭を叩いてみる。するとレインが慌てて飛び起きた。
「うをっ!?…何だ、イヴっちか」
「あんた、何時まで寝てる気よ」
「えーと、起こされるまで?」
「さっきリネが起こした筈だけど?」
その言葉にレインが苦笑したままその場を立ち上がる。やっと起きる気になったらしい。
軽く欠伸をする彼に事情を話して、グヴェース大森林の場所に着いて聞いてみた。
「グヴェース大森林?此処から北に15分位進んだところにあるぜ」
……意外と近い。これならいけるかも。軽くレインにお礼を言って、再びリネ達の所に戻った。


「あたしが行くわ、グヴェース大森林に」
「えっと、じゃあ私も行く」
イヴの言葉にマロンがその場を立ち上がる。
「俺も行くよ」
ロアがマロンに便上して頷いた。
「俺は…待ってるよ。アシュリーが心配だし」
セルシアが少し悩んだ顔でそう答える。確かに1人か2人は彼女の傍に残っておくべきなので頷いた。
「ゲルトアースとシャインリースっていう薬草が有ればいいの。詳しくはこれ見て」
リネがそう居てイヴに2枚のレポート用紙を渡す。レポート用紙には写真付きで2つの薬草についてが載っていた。
レポートを渡してきたということは、リネも此処に残る気なのだろう。
「ありがとう。行って来るわね」
彼女に軽く礼を言って、踵を返してその場を歩き出した。


「あんたも来なさいよ。道案内して貰わないと困るんだから」
途中まだ同じ場所に立っていたレインを引っ張って、その場を歩き続ける。
「へいへい、りょーかい」
承諾したレインが、イヴの隣を歩き出した。道案内する気は一応有る様だ。ていうか、そうじゃないと困る。
とりあえずリネ達を残して、グヴェース大森林に向けて歩き出した。



* * *


――グヴェース大森林入口。
レインの言う通り、約15分程度で此処まで無事にやって来た。
唯大森林と言う名が付いているだけあって、森林は相当広そうだ。
とりあえずリネから借りたレポートを見てみた。ご丁寧に生えている場所まで書いてある。これなら直ぐに見つかる…かも。
レポート用紙に載っていた薬草の生えている場所に着いてを詳しく読んでみる。
書いてある言葉を信じるならゲルトアースが下流。シャインリースが崖によく生えているようだった。

「どうする?二手に分かれる?」
一度レポート用紙から目をそらして3人に問い掛ける。
彼女の問いに悩んだ顔を見せた3人が暫くして頷いた。此処は二手に分かれたほうが効率が良いのを、3人も分かっているようだ。
「じゃああたしとロアでシャインリース取りに行くから、マロンとレインでゲルトアース取りに行って。
薬草を無事に採取出来たら此処に戻ってくる。…それで問題ないわよね?」
問い掛けながらマロンにゲルトアースに着いてのレポートを渡した。彼女がそれを受け取り、レインと一緒にレポート用紙を見ている。
暫くレポート用紙を見ていた2人がやがて顔を上げて頷いた。

「んじゃ、俺等は下流辺りに行って見るわ。因みに崖は此処から更に真っ直ぐぐらいだと思うぜ」
そう言ってレインが踵を返し、大森林の西の方向に向かって歩き出す。それをマロンが慌てて追いかけて行った。
流石にレインもマロンが居れば勝手な行動はしない。…と思う。多分だけど。
それを思って彼女とレインを一緒に行かせたのだが…やっぱり自分がレインと行った方が良かっただろうか。今更遅いけど。



「…とりあえず行くか?」
2人が森林の奥に向かうのを見届けてから、ロアがイヴに問い掛ける。

「…そうね。ま、レインの言葉を信じて真っ直ぐ進んでみましょ」
過ぎた事をいちいち考えてしまっても仕方ない。とりあえず此処はレインとマロンを信じよう。
アシュリーの容態も掛かってるし、今回ばかりはレインもまともで居てくれる筈。悪魔で予想だけれど。
そう思いながらレポートをもう一度鞄に閉まって、ロアと共に森の奥に向かって歩き出した。










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