「……幾らなんでも…此処まで…来れば……追いかけて来ないでしょ…」 息切れしながらリネが言葉を呟く。その言葉に便上してマロンが頷いた。 無事に鉱山を脱出し、更に鉱山から少し離れた森の中で一行は足を止めた。流石に体力の限界だ。鉱山の中を走り回って居たので好い加減疲れ た。 「とりあえず…今日は、此処で…野宿…か?」 リネと同じように息切れしたセルシアが、呼吸を整えながら問い掛ける。 その問いにロアの背中から飛び降りたイヴが頷いた。 そんな彼女の側にマロンが寄って来る。イヴの足の治療も含めて、やはり今日は此処で野宿だ。疲れた疲れたと言って顔は全然疲れていないレ インが腰を下ろすのを見て、イヴ達も同じように地面に上に座った。 *NO,35...WISH*UNION* 「…多分、これで大丈夫」 「ありがと。もう痛くないから平気」 先程まで治癒術を掛けてくれていたマロンの言葉に、頷いてその場を立ち上がった。 …回復術師って、こういう所が凄いと思う。先程までずっと痛かった足が、嘘みたいに何の痛みを感じなかった。 「本当に平気なの?足、大分腫れてたじゃない。血とかだらだらだったし」 傍に座っていたリネが問い掛けてくる。少しキツい言い方な気がするが彼女なりに心配してくれている様だ。笑顔で頷いた。 ――その向かい側で、セルシアとロアが真剣な顔をして何かを話しているのが見える。 立ち上がり、2人の傍に寄ってみた。 最初に顔を上げたセルシアが、此方に声を掛ける。 「足、もう平気なのか?」 …なんでみんな同じ事を聞くんだ。そんなに酷かったのだろうかと苦笑しながら頷いた。 「何話してたの?」 大体予想は吐くが一応聞いてみた。ロアが一息置いてから答える。 「俺達のこれから。…もうcross*unionで働く気は無いだろ?」 「……まあ、無いわね」 自分に関係のある内容だったので、セルシアの隣に座った。 「別のunionに行くのか?」 セルシアの問いに、少し考えてから頷く。多分そうなるだろう。と言うか、そうしたい。 BLACK SHINEとcross*unionが裏で繋がっている。…それを知ってからどうも頭が混乱していた。 でもひとつだけ分かる。――これ以上cross*unionに加担してはいけない。 unionを退職するのは割りと簡単に出来ると思う。 ロアは幹部だから時間掛かるかもしれないけど、自分は下っ端だから直ぐに手続きも終わる筈だ。 だが問題は、何処のunionに行こうか? 一番当てになるのは‘SAINT ARTS’か‘VONOS DISE’だ。 唯SAINT ARTS見たいな調べ物系のunionは、自分にもロアにも向いてない。 かと言ってVONOS DISEはcross*unionと仲の良いunionだから、VONOS DISEもあんまり信じれない。 他のunionの事なんてあんまり知らないし……。 いっそ所属しないで置いてやろうかと思ったが、直ぐにその案は消した。 生活費が掛かっているのだから、やめる何て事は出来ない。 やっぱりSAINT ARTSかVONOS DISEか…。どっちか選ぶ必要が有るのだろうか。 3人で無言のまま考え事を続けていると相変わらずおどけた顔のレインが近付いてきた。隣にアシュリーが居る所からして、先程まで2人で何か 話してたんだと思う。 「なーに考えてんの?」 「…ああもう。あんたホントにウザい」 足の裏を殴りながら呟いた。レインが痛そうに声を上げ、アシュリーが苦笑…と言うよりは困った顔を浮かべている。 「……cross*unionの事?」 困った顔を浮かべたままのアシュリーが、こちらに問い掛けた。 その言葉にロアとイヴが同時に頷いて、溜息を吐く。 「あー、その話ね。何処に所属しようか迷ってるって事?」 「そういう事」 足を摩りながら問い掛けてくるレインに、とりあえず適当に頷いた。 そんな中で周りに5人が集まっていたので、向かい側に居たリネとマロンも集まって来る。 「ちょっと、邪魔」 無理矢理レインを退かしたリネが、イヴの隣に腰を下ろした。 苦笑顔のマロンが、ロアとリネの間に腰を下ろす。 「何話してた?」 「corss*unionを出て行こうと思うんだけど、何処のunionに所属しようか。って話」 「VONOS DISEに行けばいいじゃない。コイツが副リーダーだし、手続きも楽でしょ」 そう言ってリネがセルシアを指差す。苦笑のセルシアが首を横に振った。 「cross*unionとVONOS DISEって仲良いだろ?だからあんまり信用出来ないんだ」 「自分のunionでしょ。アンタ何処のunionと繋がってるかとかぐらい知ってなさいよ」 そんな彼の言葉にリネが逆に怒って言葉を返してきた。その言葉にセルシアが苦笑のまま黙り込む。 彼が知らないと言う事は、恐らくVONOS DISEはBLACK SHINEとは繋がってないと思う。だが悪魔で‘思う’なのであんまり信用できない。 「SAINT ARTSは?」 アシュリーが問い掛けてきた。 その言葉にロアと顔を合わせて、首を横に振る。 「無理。調査とか調べ物とか、あたし達の体質に合わない」 「……ま、体力馬鹿のあんた達に似合うunionでは無いわね。SAINT ARTSは」 皮肉を浮かべながらリネが笑う。だが正しい事ではあるので反論はしなかった。 それから再び沈黙が走る。…やっぱり良い案は無し、か。 何度目か分からない溜息を吐いた頃に、レインが声を上げた。 「どーせなら、イヴっちが作っちゃえば?――union」 「……はぁっ?!」 その言葉にイヴが怒りと混乱で立ち上がった。 レインが一歩下がって言葉を続ける。 「だぁって、VONOS DISEもSAINT ARTSも2人には合わないんでしょ? だったらいっそ、新しいunionでも作っちゃえば良いじゃない。リーダーとか決めて」 「それ、賛成」 レインの言葉にアシュリーが表情を変えずに頷いた。 「ああ、それで良いんじゃない?あんた達見たいなじゃじゃ馬に似合うunionなんて数少ないだろうし?」 レインの提案に対して、意外にもリネまで賛成する。 隣に居たマロンが微笑みながら頷いた。…コイツ等、絶対他人事にしてるな。 セルシアが苦笑しながら言葉を投げる。 「でもそれが良いとは思うよ。unionは作ったり解約するのは個々の自由だし、自分達がunionを開くんだからちゃんと信じる事も出来るし」 「…まあ、そりゃそうだけど」 セルシアの言葉に思わず納得してしまった。 けれど直ぐに首を横に振る。無理、絶対無理。 「unionの最低登録メンバーって4人でしょ?どう考えたって足りないでしょ」 「足りるわよ。マロンとレインとアシュリーでも強制的に入れたら、意地でも5人になるわ。…あたしとセルシアは無理だけど」 反論をしてみたがあっさりとリネに拒否された。 …確かに。セルシアとリネは別のunionに所属しているから入る事は出来ないけれど、それ以外のレインとかマロンとかアシュリーは何処のunion にも所属して無い訳だし。入れない事は、無い。 3人にロアと自分を足すと――うん。最低登録メンバーをちゃんと越してる。 「作っちまえば?」 挙句ロアまでもそう返してきた。…くそう、6人共絶対に他人事にしてやがるな。 「3人はどうなの?入る気あるの?」 最後の反論に出てみた。アシュリー、レイン、マロンに向けて問い掛けてみる。 「私は入るよ」 即座に回答したのはマロンだった。 …まあ、マロンならそう言うと思ってた。ずっと一緒に居た幼馴染だし、何時かあたしと同じunionに入るのが夢、って。どっかで語ってくれたし。 アシュリーとレインの顔色を伺ってみる。レインは悩んでるみたいだがアシュリーは頷いてくれた。 …うん。本当にコレは駄目だ。 たとえレインが‘入らない’って言っても、一応4人にはなるから登録メンバーの数は満たしてしまっている。溜息を吐いた。 「…リーダーは、誰にするのよ」 半分自棄になって聞いてみる。その問いかけにロアが即答してきた。 「イヴだろ、そりゃ」 「うん、イヴで良いんじゃないか?」 「賛成…」 ロアの言葉にセルシアとアシュリーが頷いて肯定する。…その回答が来る事は薄々分かっていたが、改めて言葉に出されて溜息を吐いた。 何でロアを指定しないのよ。一応あたしの方がロアより地位は下なのよ?! 「イヴっちがリーダーなら俺も入ろっかなー」 更にレインからそんな声が上がる。 …怒りを通り越して呆れが浮かんできた。本当に駄目だこれは。完璧にunionを‘作る’方向に話が進んでしまってる。 「ああもう!分かったわよ。作れば良いんでしょ!!」 どうせ今更自分一人で反論したって意味が無い事は分かってた。これはもう妥協しか選択肢が無いのだ。 「イヴならそう言うと思ってた」 隣で笑みを浮かべながらリネが言葉を投げる。 …と言うか雰囲気的に言わせてるんでしょ、あたしに。喉まででかかった言葉を無理矢理飲み込み改めて問い掛ける。 「union名、何にするのよ?」 その言葉にマロンが微笑みながら言った。 「イヴが決めていいと思うよ」 「…でも、あんまり変な名前は付けるなよ?」 彼女の言葉の後にロアが言葉を付け足してくる。変な名前って何よ。眉間に皺を寄せながら少しunion名に着いて考えてみた。 あたしに決めろって…用は考えるの面倒なだけじゃないのか。 苛々と呆れの中で、必死にunion名を考えてみる。 色々な案が頭に浮かんだのだが、割と簡単に1つに絞ることが出来た。 「――‘WISH*UNION’は?」 cross*union見たいな、悪に手を染める道なんて絶対に歩かない。 そんな‘願い’を込めたunion―――。 「…良いね。それ」 笑顔でセルシアが返してくれた。それから賛成の嵐が飛ぶ。 「じゃ、決定。cross*unionから退職したら、本登録して来るで良いわよね?」 「うん。それで良いよ」 イヴの問いにマロンが頷いて返した。 話が漸くまとまった所で、今話した事を忘れない為にポケットに入ってた紙とペンで簡単にメモをする。 その場に座って色々とメモしていると、ロアが立ち上がって近付いてきた。 「悪いな。全部押し付けて」 「…そう思うなら何か1つくらい手伝いなさいよ。このアホ」 悪態を吐きながら紙にメモを続ける。 そんな中メモしている途中で気付いた。――あ、副リーダー決めてない。 けれど直ぐに副リーダーを押し付ける人間は決まった。勿論。目の前の男だ。 「あんた副リーダーね」 ロアにそう言って、副リーダーの名前をロアでメモした。 反論を聞く前に書いてしまったので、ロアが唖然とした顔をしている。 「宜しくね?副リーダー」 「……はは、了解」 乾いた笑みで、ロアが頷いた。 BACK MAIN NEXT |