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階段はほぼ一本道の状態だった。 途中の階で出る為の扉は無く、一番下まで一直線に螺旋階段に近い階段が続いている。 薄気味悪さと肌寒さを感じながら、何とか最下層にまで降りた。 目の前には赤色の扉がある。…見るからに危なさそうな扉だ。 「…開けるのか?」 「……そりゃ、そうでしょ」 ロアの言葉に頷き、そしてゆっくりと扉を開けた―――。 *NO,28...監獄* 地図にはこの階段の事は載っていなかった。隠し階段の様な物なのだろうか。 仮にそうだとして何故そんな階段が必要だったのだろう。もしかして船員達は初めからこの船に寄生虫が住んでいる事を知って居たんじゃないだろ うか。だからこういう入り組んだ船の造りにした…? どの道これだけ時が経ってしまっているのだからそれは分からない事実だ。 とりあえず今はマロンを探すことにだけ没頭したい。そう思いロアと共に先頭を歩く。 赤い扉を開けると、其処にはずっと奥まで廊下が続いていた。怪しいとは思ったが進まない限りは何も終わらない。マロンだって見つからない。 そう思い、今は全員で用心しながら廊下を歩いている。 …ところで、先程からずっと不思議に思っていたことが1つだけ合った。 この階だけ何故か暑いのだ。じめじめとした蒸し暑さ。 それがどうしてかは分からないが、明らかに他の階より暑い。本当に一体どうなっているんだこの船は。 変な寄生虫は居るし、巨大な蜘蛛は居るし、親友は連れ去られるし…。踏んだり蹴ったりだ。 「早く帰りてー」 そんなイヴの気持ちを、レインが一言に表して言った。 誰だって帰りたい気持ちは同じだ。だがそれはマロンを見つけてから。彼女を見つける前に船を去るとか外道にも程が有る。 「あんたちょっとは黙れないの?」 レインの隣を歩くリネが、男を睨みながら言う。 その言葉にレインが笑顔で肯定の返事を返した。その瞬間リネの迅速なキックがレインに直撃する。…攻撃する相手がまず違うでしょ。とりあえず 争うのは寄生虫だけにしてくれ。溜息を吐きながら未だに続く廊下を歩く。 やがてまた赤い扉が見えてきた。 しかし他の扉を違って鉄の様な重圧な扉になっている。 そして扉には謎の文字が彫られていた。…ゲーリーンズ文字、だっけ? リネに視線を促すと、彼女が前に近付いて扉の文字をなぞる。 「……応接間。って書いてあるわね」 「此処が応接間…?」 …いかにも怪しい雰囲気だ。本当に此処にマロンは居るのだろうか。 だがこの船で探索していない場所と言ったらもう此処だけだ。やっぱり彼女は此処に居るんだろうか。 一度深く深呼吸をしてから、扉のノブに手を掛ける。 これ、押せば開くのか?それとも引けば開くのか?? とりあえず押して開けてみよう。そう思い扉を押してみようとした所で――…。 「――離れろ!!」 叫んだのはセルシアだった。 体が無意識の内に反応する。反射的に廊下の右側に身を投げ出していた。ロアやリネ達も左右に反射的に散って、廊下の中央から離れる。 その途端、大きな音を立てて扉が開いた。 勢い良く開いた扉から、あの寄生虫の本体の触手が飛び出してくる。 「ちょ…何よ行き成りっ?!」 「…どーやら此処が寄生虫の本拠地みたいよ?」 咄嗟に魔弾球を投げ付けてその場から引き下がった。 傍に居たレインが苦笑しながら部屋の奥を見ている。 釣られて部屋の奥を見るが――正直、目を逸らしたくなるような光景が広がっていた。 応接間と呼ばれている筈の大きな部屋には、無数の触手が蠢いている。幸い床にはそんなに居ないのだが、壁や天井には元の壁が見えなくなる 位ぎっしりと触手が敷き詰められていた。 そしてその中心には本体が居る。あの部屋を徘徊していた気持ち悪い寄生虫が。 寄生虫の触手の先からは――セルシアとレインに取り付いていたあの毒々しい寄生虫が中から飛び出してきており、それらは音を立てて床に落 ちていく。…あの毒々しい寄生虫。ああやって生まれてたのね。そりゃ毒々しいわ。 吐気を感じて口元を抑えた。 それでも部屋の奥を目を凝らして見つめる。 そう、まだマロンを見つけていない。アシュリーの予知が正しいのなら此処にマロンは居るはずだが――。 「イヴ!!」 反対側に居るアシュリーがイヴを呼んだ。彼女は部屋の奥の奥を指差している。 そちらに視線を促していたので目を凝らして見つめると――人影が見えた。まさか、マロン…?! 案の定そうだった。彼女は応接間の反対側の入口の方に倒れている。…恐らく気絶しているのだろう。というか、そうで合って欲しい。 反対側に駆け寄りたかったが、それにはこの触手を超えていく必要がどうしても合った。 そしてあの本体の傍もすり抜けなくてはいけない。…ちょっと無理が有る。 「大丈夫大丈夫。倒せば問題ないんだから」 レインが軽くそう言って槍を抜いた。 「倒せれば…ね……?」 正直倒せれる自信が無い。こんな化物相手にするのなんて初めてだ。 けれど、それでもやるしかない…か。 こんな幽霊船に7人揃って行き倒れなんて冗談じゃない!!何が合っても船から脱出するんだ。必ず誰一人欠ける事無く、7人で。 反対側に居るロアとセルシアは既に武器を抜いている。 アシュリーが首に填めた鎖を引きちぎる様に引いた。簡単に鎖のチェーンが外れ、彼女の姿が聖獣に変化する。 「どうすんの?戦うの?!」 リネが傍に寄りながら問い掛けてきた。 「…それしかないでしょ!!」 覚悟は、もう決めた。…どの道倒さなきゃ帰れないんだ。こうなる事は最初から薄々気付いてたし、いちいち怖がるのもバカらしい。 扉から飛び出してくる触手の群れを上手く交わして、ロアと一緒に応接間の中へ突っ込んだ。 そんな2人を見て溜息を吐いたリネが、その場で詠唱を始める。 「リネっちはずっと詠唱でしょ?守ったほうが良いよね」 「…勝手にしなさいよ。――雷さえも飲み込む戦乱の刃神」 そういった彼女が、小さく詠唱を始めた。 苦笑したレインが彼女に降りかかる攻撃を槍で上手く受け流す。 ――その反対側。部屋の外の廊下からセルシアが戦輪を寄生虫本体に向けて投げ付けた。 奇声を上げた寄生虫が、もがき苦しむ様にその場で暴れだす。 「暴れるんじゃないわよ…このじゃじゃ馬っ!!」 其処に左右からイヴとロアが剣で寄生虫本体を切りつけた。 同時に部屋の中に飛び込んできたアシュリーが、触手の一部を噛み千切る。 これなら意外とあっさり倒せるんじゃ…。 そう思って油断したのが間違いだった。 「イヴ!ロア!!」 セルシアが叫びながら、援護にチャクラムをこちらに投げ付けた。 咄嗟に後ろを振り向く。――何も居ない。 「違う!!上だ!!!」 セルシアが叫んだ事により、やっと気付いた。――上を確認する前に、何とか後ろに引き下がる。 ロアも同時に左に体を投げ出した。 間一髪で触手の攻撃をかわす。…後でセルシアにはお礼を言おう。そう思いながら直ぐに体勢を立て直した。 「風の階(きざはし)、天に紡ぐ蒼天の力」 ――振り上げた腕が、大いなる風を生み出す。 体勢を立て直して直ぐ、リネが此方に向かって腕をふるい下ろすのが見えた。多分詠唱が完成したんだ。 ロアとアシュリーに声を掛けて、その場から引き下がる。 「――ティムフロウ!!」 振るい下ろされた腕に共鳴して、魔法陣が激しく光り輝いた。 強大な技なのだろう。…中級技だろうか。 彼女の手により生み出された風が鎌鼬の形となり、寄生虫に襲い掛かった。 触手を囲うように風が回りに集まり、そして寄生虫本体に風の裁きが下る。 一瞬風が空を切る音が鳴り響いた。同時に寄生虫の彼方此方が切り刻まれ、床に緑色の血が吹き飛ぶ。 やったか?!思わず笑顔を零したがそれは全くの見込み違いだった。 何故なら、寄生虫は信じられないスピードで――自己再生を始めていた。 BACK MAIN NEXT |