全員へ降りかかる一撃目の攻撃を、全員が全員何とかかわして見せた。 後衛から弓を射るマロンの傍、セルシアが向かってくる蔓に向かって勢い良く戦輪を投げつける。 この敵もマドックと同じ。近距離に出ると危ないだろう。 「レイン、リネのサポートに回って!」 近距離型である彼にはリネのサポートに回るように言った。 意図を読み取ったレインが暢気な声で頷き、襲い掛かってくる蔓を槍で上手く切りながらリネの傍に走る。彼女の方は既に詠唱を始めていた。 弾丸を入れ替えたロアが銃弾を発砲するのを見て、イヴもなるべく火系の魔弾球を投げつける。 効いてはいると思うのだが蔓の復活が思うよりも早い。 蔓を攻撃してるだけでは意味がないのだ。何処かにあるはずである‘心臓’となる部分を早く見つけなくては――。 *NO,12...孤高の花束* 「心臓部分がどっかにあるはずなんだけどな」 同じ事を思っていたらしいロアが、近付いてきながらそう言った。 「あたしもそう思う」 その意見にイヴもまた賛成を述べる。 そして、再び再生して襲い掛かってくる蔓を鞘から咄嗟に抜いた剣で跳ね返した。 「俺の予想だと花だ」 「あたしの予想は胴体の真ん中」 「…どっちにする?」 「どっちも破壊すれば良い事でしょ!!」 イヴがそう言って再び魔弾球を投げつける。――蔓の化物の胴体となっている、花と茎の部分に向かって。 上手く花に魔弾球が当たり、花が四方に散った。だが散った花からは鱗粉の様な物が飛び出してくる。 「ちょ…誰よ変な攻撃したの!!」 その所為で一時的に蔓の化物からかなりの距離を取らなくてはいけない状況となってしまった。 当然詠唱も中断するしかなく、リネが怒りを露にしながら叫ぶ。 「…花じゃないみたいだな」 「……そうね」 頭を抱えながらイヴが頷く。 そんな2人にセルシアが苦笑しながら2つの戦輪を投げ付けた。戦輪の1つが立ち憚る蔓を滅多切りにし、もう1つの戦輪が化物の茎に刺さる。 「―――!!」 喉太い、低い声が辺りを包んだ。それが超音波の様に聞こえる。煩い。 思わず耳を塞いだ。他の皆も同じ様に耳を塞いでいる。 ――音が止む頃には茎についていた筈の傷は、元通りに戻ってしまっていた。 「ちょ…あいつ不死身?!」 「そんな事はない…と思う」 リネの叫びに手元に戻ってきた戦輪を手に持ちながらセルシアが呟く。 だが見たところ不死身にしか思えなかった。茎に攻撃しても、攻撃が効かないとなると…。 「ああもう!何処が‘心臓部分’なのよっ!!」 苛立った顔をするイヴの言葉に、マロンがぽつりと呟く。 「…もしかして、あれ?」 マロンがそう言って指差した先は、虚空だった。 だが良く目を凝らしてみると――ぼんやりと光り輝く物が花の上に集まっている。そう、まるで蛍みたいな…。 「もしかしてさっき見た蛍って…」 「あれ、なのか…?」 「…そうなんじゃない?って事はやっぱりアレが心臓かしら?」 リネがそう言って即座に腕を振るい上げる。 「振り上げよ、聖光なる炎。――ファイヤーボルト!!」 腕を振るい下ろしたと同時。魔法陣が光り輝き、現れた炎が蛍の様な光を攻撃した。 すると茎が先ほどの様な喉太い声を上げる。…だが耳は痛くなかった。 ――やはりアレが‘心臓部分’!! 「あんまり効いてないみたいね」 「…炎じゃ駄目何じゃねえのか?光ってんだから闇属性の魔術とか効くかもしれねーぞ?」 レインの言葉には確かに説得力がある。意外と闇属性の攻撃が効くかもしれない。 リネに声を掛けようとしたが――彼女が首を横に振っていた。 「あたしは使えないわよ。闇属性の術なんて」 その言葉に思わず顔が真っ青になる。…術系等の技では万能とも言えるリネに使えない属性の術があるなんて思わなかった。 そういえば魔術士には得手属性と不手属性が合って、不手属性の術は使用出来ないと何処かで聞いたことがある。 恐らくリネは闇属性が不手属性だったんじゃないだろうか。だから習得が出来なかった? 何にせよこの状況がピンチな事に変わりは無い。 「じゃあどうすんのよ」 その問い掛けに、リネが顔を俯かせて呟いた。 「…セルシアなら、いけるんじゃない?」 そう言って少しだけ顔を上げた彼女がセルシアの方を見る。 その言葉に今度はセルシアが躊躇いがちな顔を見せた。 「……使えるか?」 「…多分」 ロアの問いに、セルシアが少し顔を顰めたまま頷く。彼はそのまま蔓から数歩下がって小さく詠唱を詠い始めた。 足元には紫の色をした魔法陣が浮かび上がっている。 魔術は多分心配ないだろう。大丈夫。セルシアは絶対に成功させる。 となると問題になるのは――どうやって蔓の妨害を防ぐか。だ。 案の定蔓の攻撃は明らかにセルシアの方を狙っていた。闇属性が弱点で間違いは無さそうだ。 襲い掛かろうとする蔓とマロンが弓で打ち落とし、リネが魔術で追い討ちをかける。 それでもセルシアの傍まで来る蔓は何時の間にやら場所を移動しているレインが槍で上手くなぎ倒していた。これならいける――! 「闇の声の旋律、御士への手向け――。…そこから離れろ!」 セルシアが腕を振り上げながら叫ぶ。 近くに居たイヴとレインがその場を離れた。それと同時にセルシアが腕を振り下ろす。 「――ダークトラット!!」 完成された魔法陣が光り輝き、イアリングに填められた魔術増幅器が共鳴の光を放つ。 闇の攻撃が化物の上に咲く花の真上――光り輝く蛍の様な物に丁度直撃した。 すると、どうだろう。 先程まで活発に動いていた蔓が動かなくなり、化け物の体はどんどん萎んでいった。 光を放っていた蛍の様な物が回りへ飛び散っていく。まるで火花の様だった。 「やっぱり闇属性が弱点だったんですね」 マロンがそう言って嬉しそうに笑う。 徐々にスピードを上げて萎んでいく化物を見ながら、イヴがほっと一息を吐いた。 「何が‘多分’よ。全然ヨユーじゃない。…あたしに比べたらまだまだだけど?」 安堵の溜息を零すセルシアに、リネが口元を攣り上げながら喋りかける。 その言葉にセルシアが少し疲れたような顔で笑った。あまり魔術を使うのは慣れていないのだろう。 そうしてモンスターの動きが完全に止まってから、リネがあっ!と声を上げる。 「…これが、アレキサンダーの花なのよ」 リネがそう言って今さっき倒したばかりの蔓の化物の頭部分を指差した。 どうやらこれがアレキサンダーの花だったようだ。…成る程。確かにあの医者の言う通り‘貴重な素材’だ。 ロアが慎重に花の傍に近付き、大きな花びらを回収する。 「これでアレキサンダーの花は入手したな」 「後はグランドパレーのフィリアの水ね」 ロアの言葉に、イヴがにっと笑った。 BACK MAIN NEXT |