リネの眼が驚きの瞳をしている。その声に助けてくれた彼の方もまた、驚いた顔をしていた。
「…リネ?」
――どうやら2人は知り合いか何かの様だ。反応からしてそれが伺える。
「助けてくれて有難う。…で、あんたは誰?リネとはどういう関係?」
イヴがその場を立ち上がり、彼に問い掛ける。
その問いに答えたのは彼――ではなくリネだった。
「コイツはセルシア。union‘VONOS DISE’の副リーダーで、……あたしの幼馴染」


*NO,11...幼馴染*


副リーダー。というと相当高位な地位だと思った。少なくとも幹部であるロアよりは地位が高い事になる。
そしてイヴとロアの所属するunion‘cross*union’と彼の副リーダーを勤めるunion‘VONOS DISE’は友好関係のunionだ。少し見覚えがあるような
気がしていたのだがそれが原因なのだろうと思った。
「あんた何で此処に居るのよ。仕事はどうしたの」
「此処に居るのはサンクティアの街の救済の為。因みにこれが仕事だ」
苦笑を浮かべるセルシアが、膨れ面のリネの問いに答える。
「じゃあ、私達と目的は一緒って事。ですか?」
そんな彼にマロンが問い掛けた。
マドックの角を取っていたレインとロアも傍に寄って来る。その手にはマドックの大きな角が握られていた。
「…そっちもそういう事情でマドックを?」
「まあ、そんな感じ」
セルシアの問いに小さく頷く。
「…じゃあグランドパレーに行くんだよな?」
「行くも何も、一応そっちが本題だから。あたし達」
そう言って彼に今までの経緯を簡単に説明する。
ロアとイヴがcross*unionの一員である事も話すと、ちょっとだけ驚かれた顔をされた。…どうやら彼は感情とかが表に出やすいようだ。ロア並に単
純だと、頭のどっかで覚えておこう。

「……経緯は分かったよ。――その上での質疑何だけど、俺も着いて行って良いか?」
「だからあんた仕事はどうすんの」
セルシアの問いに真っ先にリネがキツい言葉を返す。
彼を嫌っているという訳では無さそうだし、どちらかといえば好いているのだと思うが…どうやら彼の前だと冷たい態度を取ってしまうのが彼女の性
格の様だ。そしてそれにセルシア自身も慣れてるらしく、普通の顔で応えた。
「だから、これが仕事だって。サンクティアの街を救うのが任務」
「…ホントに?」
「どうやったら信じてくれるんだよ」
彼の顔が苦笑に変わっている。そのやり取りに思わずくすりと笑ってしまった。
「あたしは構わないわよ。目的が一緒なら一緒に行動した方が良いだろうし」
「私も賛成です」
イヴの言葉にマロンが賛成の声を返す。後ろに居るロアとレインも大きく頷いていた。
4人の反応を見てか仕方なくリネも了承する。…ちょっとだけ嬉しそうにも見えるが。
「有難う。じゃあ宜しく。…えっと」
「イヴよ。イヴ・ローランド」
「マロンですっ」
「ロアだ」
「俺はレイン。まあ宜しく」
軽く挨拶をして、同じ道を歩き始める。


薄霧の湿原を抜けてから、セルシアの横を歩くイヴが問い掛けた。
「あんたの武器ってチャクラム?」
「ん?ああ、そうだよ。後は少しだけ魔術を齧ってるから、補助程度に魔術かな」
確かに彼の耳元で揺れているイアリングに、魔術増幅器が填められている。
恐らくリネ程術は使えないだろうが、この先大きな戦力になってくれそうなのはよく分かった。

空は既に日の入り寸前になっている。
「これからどうする?」
レインの問いに、イヴは振り返って応えた。

「アレキサンダーの花を取りに行くわ」

――アレキサンダーの花は、夜の間にリネート渓谷に咲くと言っていた。
此処からリネート渓谷まで、歩いて数分の筈だ。
それにアレキサンダーの花もサンクティアの街を救うのに必要な素材の1つなので、何れは取りに行かなくてはいけないのだ。

「分かった。じゃあ其処に行こう」
ロアの言葉に、イヴを含む全員が頷いた。





* * *


夜のリネート渓谷は、何処か神秘的な感じもした。
自然が多く残っており、河の傍には幾つかの蛍も飛び回っている。
「綺麗ですねー」
マロンがそう言って嬉しそうに周りを駆けて行った。確かに渓谷の景色は綺麗としか言い様がない。が。

「ちょっと、気をつけてよ?地面とか結構滑り易くなってるし」
地面の土が湿原程では無いがぬかるんでいた。近くの葉に水が落ちている事からして少し前は雨が降っていたのだろう。
「結構冷えるな…」
セルシアがそう言って、少しだけ肩を震わせた。
雨上がりの渓谷は冷たい風が吹いている。確かに少し肌寒い気もした。
そんな時。

「…ちょっと、静かにして」

リネが冷たく言い放った。
その言葉に思わず全員が黙り込む。
――静寂の渓谷の中。聞こえるのは風の音と草木の揺れる音。そして…。


「…!」


何かが、動く音。




「右だ!!」

ロアがそう叫ぶのが耳に入った。
右側に居たリネとイヴ、セルシアが咄嗟にその場を離れる。
直後。3人が居た場所には――蔓の化物が立っていた。

「ちょ。なにコレっ…!!」
「これも、モンスター…?」
「…そう簡単にアレキサンダーの花は取らせませんよって事だろ?」
イヴとマロンの騒然とした声に、レインが苦笑しながら応える。
「やっぱりコレ倒さないと駄目なの?」
「…まあ、そうなんじゃね?」
リネの問いに相変わらず苦笑したままのレインが答える。
不気味な蔓を蠢かせる蔓の化物は、此方の方を向くと長い蔓で攻撃をしてきた――。










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