少しだけ頷いた彼女が、純粋に此方を見上げる。…それからマロンは、少しだけ足を止めた。
「ロストからの最後の試練。私が映した心の闇はレインだった」
…てっきりイヴだと思い込んでいたんだが、俺だったみたいだ。ロストはどうして最後の試練にイヴじゃなく俺を、彼女に魅せたのだろうか。
問い掛けようとして、再び彼女が唇を動かすのが見えたので口を動かすのを止める。
「私とレインは、きっと似てるんだと思うの」
「俺とマロンが?」
小首をかしげた。


*NO,126...最期の夜・後*


マロンとは比較的仲が良かった方だ。俺が裏切る前も、裏切った後も。彼女とはよく話をする。案外セルシアより一緒に居たかもしれない。
確かに時折彼女から似たような物を感じたけれど、俺と似てるって事は無いんじゃないだろうか。
近くに在る瓦礫に腰を下ろした。これは絶対に長引く話だろう。釣られてマロンも隣に腰を下ろす。…空は相変わらず淀んだ赤色をしていた。
「…どうしてそう思った?確かに俺もマロンとは似てるかもしれない、って思ったことは有ったけど」
改めて問い直せば、彼女は少しだけ唇を綻ばせる。
「前に、ちょっとだけ話したよね。私のご両親の事」
…聞いた事有る気がする。どのタイミングだったかまでは思い出せないが、俺が裏切るもっと前…アシュリーが仲間に入ったぐらいか?その前後
で確かにマロンから一度両親の話を聞かされた覚えが有った。
いや、あれは俺から聞いた気がする。彼女と似たような物を感じて、俺が問い掛けた気がしない事もない。
とりあえず彼女の過去は、少しだけ聞いた事がある。肯定の返事を返した。
「私が12の時に事故で両親が死んじゃって。…ずっと泣いてた。ひとりにされた事が怖くて、ずっと。暗い所で泣いてたの」
…ああ、その気持ちは俺も体験した事が有る。
10年前。グローバルグレイスという還る場所を無くした俺とノエルは、ヘレンに引き取られた。BLACK SHINE本部で過ごす事となって、暫くは膝を
抱えて蹲っていた。どうして俺は此処にいるんだろう。空しさと寂しさを埋める物は何も無くて、ずっと空虚のままだった。
「それをイヴが助けてくれた。イヴのお母さんとお父さんも早くに他界されたみたいで、きっと同じ物を感じたんだと思う。
私とイヴはそれから一緒に住むようになったの」
…成るほどね。俺にとっての救いはヘレンだったけど、彼女にとっての救いはイヴだった訳か。
確かにダブってる所も有るけれど、進む道はこんなにも違っている。彼女は光の道へ。俺は深遠の闇へ。
「…嫌われないように、必死だったんだ。イヴまで私から離れていっちゃったらどうしようって思って。また独りになるのが怖くて。
無理にイヴに合わせてた時も有ったかも知れない。
‘嫌い’だからじゃなくて、‘好き’だから。…嫌われたくなかったの」
「――…」
……そうか、それで彼女は‘俺と似てる’と言ったのか。
今の言葉、全部俺に当てはまる。
嫌われたくなかったんだ。例えこんな険阻な仲になっても、俺はまだノエルの事を心の何処かで好いてるから。
これ以上嫌われたくなくて、彼女に合わせるしかなかった。だからこうしてずるずるとBLACK SHINEに留まったままだった。
ヘレンが間違った事をしてる事なんて最初から分かっていたのに、セルシアの気持ちだって気づいたのに。
それでも俺はノエルと離れるのが怖くて、独りにされる恐怖を知りたくなくて、無理をしてでも誰かに合わせていた。
「…そ、か」
掛けれる言葉はそれだけだった。マロンと俺。確かに似ているのかもしれない。
置かれていた状況が違うとは言え、感じていた気持ちは何処か重なっていた。
――それでロストが彼女に魅せた‘試練’は俺だった、って事か。
彼女は隣で静かに泣いていた。零れる涙を拭ってやってから、瓦礫の上を立ち上がる。
「ちょっと待っててくれ」
彼女はロストからの試練で、自身の闇に気づき、そしてそれに打ち勝った。
――俺もそろそろ決意しないといけない。俺自身と向き合う事を。
瓦礫に座ったままのマロンが小さく頷いた。軽く頭を撫でてから、踵を返す。
「直ぐ戻る」
何時までも此処に彼女を待たせる気などない。
唯独りで俺とノエルの住んでいた場所に行こうと思うのは、俺も過去と決別を迎えたいから。もう独りじゃない。知ってるから、過去の自分とは別れ
を告げる。ソレは俺自身の問題だから、マロンが無理についてくる必要は無い。
俯いたままのマロンを気にしつつも、少し離れた場所に有る瓦礫の山を目指して歩く。


やがてたどり着いた瓦礫の山に足を止めた。
…此処にはもう何も残ってなどいない。分かってる。
――失った物は取り戻せないんだ。そんな事も当の昔に気づいていた。
セルシアはもう決裂した。リト・アーテルムと、そして過去の自分と。
セルシアにはああだこうだと言って、俺だけ決意を決めないのも彼に失礼だ。

不意に後ろから足音が聞こえ、振り返った。恐らくマロンが追いかけてきたのだろう。声を掛けようとして―――硬直する。
前から歩いて来るのはマロンでは無かった。今度は虚像でもドッペルゲンガーでもない。…ノエルが、その場に立っていた。
「…どうして、」
此処に。
問い掛ければ彼女が深い溜息を吐く。真っ直ぐに此方をみた彼女が唇を動かした。
「結局裏切ったのね。ヘレンの事」
…少しだけ目線を落とす。ヘレンを裏切り、BLACK SHINEを抜けたという事。それは同時にノエルへの裏切りでも有る。
俺は結局、イヴ達かノエルのどっちかを傷つけないといけない微妙な立場に居たんだ。
こんな事になるのなら、もっと早くBLACK SHINEを抜ければ良かったのかもしれない。そうすれば未来は少しでも変わったのだろうか。
「――明日、来るんでしょう。本部に」
「…ああ」
ソレだけを言うのが精一杯だった。
それを聞いた彼女が再び踵を返す。追い掛けようと一歩踏み出したけど、止めた。追いかけたらそれは――過去の自分に戻ってしまう。
追いかけないって、決めたじゃないか。
彼女と決裂の道を選んだのは、俺自身じゃないか。
動きそうになる足を無理に引き止める。…歩き出した彼女は最後に一言だけ残した。


「待ってるわ。貴方が来るのを。――だから精々死なないようにね」

…それは、どういう意味……。
問い掛けるより前に、ノエルは再び何処かへ行ってしまった。…暫くは立ちすくんだまま、動けなかった。



* * *


イヴをcross*union本部より少し離れた場所に有る森に下ろしてから、最後にグランドパレーに辿り着いた龍はそのまま空へと消えていった。
ひとりで諸島に戻るのは随分久しぶりだ。これまではずっとイヴ達と行き来してたから、それが当たり前になりつつ有った。
深呼吸して、森の中を歩き出す。
里には後から行く。けれど最初に行かないといけないのは―――。


そうして辿り着いた神殿―クライステリア・第二神殿―に足を踏み入れる。
薄暗い神殿の中を歩き続け、やがて扉の前に辿り着いた。ペンダントを嵌めれば扉はいとも簡単に開きだす。
そうして最深部の部屋に辿り着き、此方をじっと見る父の前で腰を下ろした。

「…どうした?」
「……話を、しにきたの」

きっと此処に帰ってくるのはこれが最期。
この地を歩く事が出来るのも今日で最期なのかと考えると、よく分からない不思議な気分になる。
選んだ道を後悔してる訳じゃないけれど、心にしこりが、つっかえが残ったままだ。こんな気持ちを何と例えればいいんだろうか。
――深く深呼吸して、父を見上げる。
誰よりも憧れていると同時に、誰よりに恐れている存在てある獣の王は其処に凛と君臨している。
一瞬だけ言葉を発する事に躊躇したが、唇をかみ締め、言葉を発した。
「…心龍に有った。仲間に神官の一族が居て、塔に入れてもらったの」
「……そうか」
目を細めた男がそれから?と言葉を投げる。
少しだけ間を置いて答えた。
「夢喰いを封じる手立てを教えてもらった。
新しいネメシス―心具を作ってもらって。私達7人が明日、夢喰いを封じに行く」
その‘リスク’の事を話そうか迷ったけど、結局話せなかった。
イヴがライカにリスクを話さなかったのは、きっと引き止められると分かっていたからだろう。だから私も言いはしない。
言ったらきっと、父は私を止める。‘どうしてお前がそんな事をする必要がある’と問い掛けてくるだろう。だから、言わないほうが良い。
私の決意が揺らいでしまうから。
「……そうか」
暫く沈黙していた父がやがて首を縦に振った。男は言葉を続ける。


「その封印のリスクが、アシュリー等7人の‘命’、か」

「…知ってたの?」

驚いて顔を上げた。寂しそうに顔を綻ばせた父が小さく頷く。
…父は心龍によって3番目に作られたウルフドール族。
4千年もの世界の歴史を幾度と無く見てきたのだろう。詳しいのも当たり前なのかもしれない。
けれど気まずくなってしまった。やっぱり止められるんだろうか。俯いていると父から声が降り注ぐ。
「正直に言えば、私はアシュリーにそのような事をして欲しくない」
私は何れ父の代わりにウルフドールを束ねるという使命が有る。それが王族に生まれた私の運命だと、私もそう思っていた。
けれど私が此処で死ねば、父の跡継ぎは誰も居なくなってしまう。そういう事をひっくるめて、父は私に行って欲しくないと言うのだろう。
物寂しい様な、空しいようなそんな気分の中で、父は言葉を続ける。

「唯、アシュリーが自分で決めたことなら、私には止める資格が無い」
…目を丸くする。認めて、くれた?
「…良いの……?」
もう還って来れないかもしれない。
心具を使い、夢喰いを封じること。それは私たち7人の命を掛けるのだから、帰って来れる保障何て何にも無い。寧ろ――…。

それでも父は優しく微笑み、呟いた。


「自分の運命は、自分で決めなさい」
「……あり、がとう」
涙を零すと、父は優しく頭を撫でてくれた。




* * *


別れを告げて直ぐにまた会いに行くのもどうかと思ったが、他に行く場所も無いしイヴ達も既に行ってしまった。此処でする事何て姉貴に会う事以
外何も無いので大人しく実家に戻った。
当然、ライカの反応は想像していたものだ。
「いってらっしゃいって言った直後に戻ってくるのもどうよ」
「それは俺だって思ってるって」
苦笑しつつも、彼女は家の中に上げてくれた。
それからイヴ達の事を聞かれ、彼女達は自分のするべき事をしに行ったと説明する。事実、6人はそれぞれ思い通りの場所に行った訳だし。
「あんたのやりたい事は?何か無かったの?」
「…もう少し姉貴と話しておきたい事が有ったぐらい、かな」
そう返せばライカが微妙に小首を傾げる。彼女と一緒に二階応接間に入り、席に座った。
相変わらずウィンドブレスの気候は凄い。降り積もる雪は未だ止む気配は無かった。
昔から見ていたこの景色も、きっと今日で見納めだ。
選んだ道を後悔している訳じゃない。イヴ達もきっとそうだ。唯、未練が無いと言えば嘘になる。
半端な気持ちじゃあ明日想定夢喰いに勝てる筈も無いと、わかってはいるけれど。

「…明日、行くのよね?」
暫く沈黙していると、空を見上げていたライカが声を上げた。
恐らく夢喰いの事について聞かれているのだろう。無言で頷けば、彼女が窓から目線を離す。
「――ねえロア」
「…何だよ」

「ネメシスの石の代わりと成る物―心具。使用するのに、リスクは有るんでしょう?
そんな大物がリスクも無しに使えるとは思わないわ」
…気づかれてた、か。
イヴが口に出さなかったとは言え、彼女もそれには気づいていたのだろう。神官という職を考えれば、それが分かるのも当たり前なのかもしれな
い。俺は少し姉貴の事を嘗めていた様だ。気づかれてないとばかり思っていた。だからこうして話そうか迷っていた訳だが。
「…正直に言って、在る」
「……でしょうね」
それは何かと問われ、再び沈黙してしまった。これは言うべきなのだろうか。このまま黙認しておくべきなのだろうか。
黙認しておけば後から姉貴が怒るのは当然だろう。どうして言ってくれなかったんだって、嘆くに違いない。
だからと言って今此処で言えば、止められる事も目に見えている。じゃあ俺はどうすれば良い?
「…話せない様な‘リスク’って事?」
確信を突いた言葉だ。
…彼女を、上手く騙す自信が無くなって来た。やっぱり俺もイヴに着いて行くべきだったのかもしれない。苦笑して、ライカと向き合う。

「俺達7人の命を使う。…心龍はそう言ってた」

「――それって」

運が悪ければ命を落とす。…いや、運が悪くなくても命を落とすかもしれない。
そういう危険な作業を、俺達は明日しに行かなくてはいけないんだ。
今思えばどうして俺達なんだろうと思うけれど、よく考えてみればあのパーティーにはネメシスの石に関わる人間が多い。イヴは管理者の娘だし、
セルシアは10年前の事件の加害者。アシュリーはウルフドール族の王族で、俺が神官の血を引いてるとなると、パーティーの殆どがネメシスの石
に関わってる訳だ。俺達がやらなくてはいけない理由もなんとなく分かってしまう。
「……それで何にも言わなかったのね、イヴちゃん達」
「…そういう事だと思う」
俺が喋っちゃったから彼女の黙認も意味を無くしてしまった訳だが。
明日イヴに謝って置くべきかと色々考えていると、彼女は首に掛けているペンダントを静かに外し、俺の前に置いた。
「気休めにはなると思う。意味が無いかもしれないけど、持って行って」
…雫型の宝石の内側に、三日月のマークが浮き上がっている不思議なペンダントだ。これは確か、神官である人間しか持ってはいけない‘証’の
様な物だったと思う。
「良いのか?」
「…良いわ。そんな物有っても無くても変わらないし」
彼女は目を伏せた。そして、静寂の部屋に呟く。
「…待ってるわ、あんた達が帰ってくるの」
「――姉貴」
「諦めないで。最初から死ぬって決め付けないで。…お願い、だから」
――喉奥が熱くなるのを感じた。
最初から‘死’を決め付けるな…か。確かに心龍は俺達の命を掛けるとは言ってたが、死ぬまでは言ってないもんな。
もしかして、っていう可能性を信じていても、良いのかも知れない。ていうか信じたい。この場所に、もう一度帰って来たいから。
「…あのさ」
声を投げると俯いていたライカが少しだけ此方を見た。
「もし、帰ってこれたら。――ただいまって、言わせて欲しいんだけど」
「…分かった。待ってるわ、ずっと」
微笑んだ彼女に釣られ、同じように微笑んだ。



* * *


「本当に一人で大丈夫なの?」
去り際、アシュリーにそう聞かれたが笑顔で頷いた。どうにかなるでしょ、と自分では思ってるけれど本当にどうにかなるかは分からない。
そんな訳でcross*union本部まで歩いてやってきたのだが――心なしか人が少ない気がする。何か合ったのだろうか。不思議に思いながら静まり
返った本部の廊下を一人で歩いた。
リーダーは多分、私室に居ると思う。ていうかそれ以外に無いでしょ。
一人で長い廊下を歩いていると、やがてリーダーの私室に到着する。
…一瞬、部屋に入るのを躊躇ってしまったが直ぐに首を横に振り、扉をノックした。
ゆっくりと扉を開くと、やっぱり、居た。
「――イヴ君、か」
呟いたcross*unionリーダーが、開いてる席に案内してくれる。お言葉に甘え、席に腰掛けた。

「…君だけか?」
「皆忙しいんで、あたしだけです」
嘘は言ってない。皆それぞれしたい事をしに行ったんだから、当然忙しいのだ。
そうかと呟いたリーダーが、此方を見た。
「レイン君は、どうなった?」
「…戻ってきてくれました。今は居ないけど、とりあえず一緒に居ます」
「……それなら良かった」
…あたし達を助けてくれたとき、リーダーはレインの事口にしてたもんな。
レインもレインであたし達を裏切った後、リーダーにあたし達の身柄を預けたって事はそれなりに信頼関係的なものが合ったのかもしれない。
それとも、同じヘレンに反感を持つ者として話が合う所が合ったのだろうか。
悪魔で予想だから何とも言えないけれど。

「…夢喰いを、封じに行くんだろう?」
何処でそんな情報を手に入れたんだろう。それともあたし達がやろうとしている事はやっぱりヘレンに筒抜けなのだろうか。流石にもうレインやリネ
が此方の情報を漏らしてる筈が無いし、ノエルやキースにでも監視されていたのかもしれない。苦笑混じりに頷いた。
「行く前に、一度会っておきたかったんです」
確かにBLACK SHINEと繋がっていた人だった。
けれどレインが裏切った後に介護をしてくれたのも、今まであたしやロア、マロンの面倒を見てくれたのも、結局はこの人で。
もし‘明後日’があたし達に無いのなら、どうしてもお礼だけは伝えておきたかった。それがあたしのこの世界でやり残したこと。だと思う。
「…今まで有難う御座いました」
少しだけ頭を下げると、リーダーが微笑む。…やっぱりこの人は悪い人じゃない。心の何処かでそう思った。

「……あの、それで。気になったことが有って」
「何だね?」
「――本部にあんまり人が居ないみたいなんですけど」
廊下を歩いてる時、誰にも擦れ違わなかった。時々人影は見るけれど、昔に比べて随分人が少ない。
それが気になっていた。だから問い掛けてみたのだが――。
問いに対しリーダーが苦笑した。一呼吸おいて、男は言葉を発する。
「畳もうと思ってね」
「――それって、cross*unionを廃止するって事。ですよね」
「簡単に言えばそうなるな」
…驚いた。
世界一と呼ばれていたunionだ。堕ちるのは簡単だって、誰かが言っていたけれど。それは満更でも無いらしい。

「…どうして、ですか?そりゃあ、BLACK SHINEと繋がってた事はあたしもショックだったけど、良いunionだとは思ってたのに」
BLACK SHINEと繋がってる何て知らなければ、完璧なunionだった。
人助けの回数も、抱えてる人数も全てがどのunionよりも圧倒的だ。
用兵関係ではTOPで有ったunion―今は亡きVONOS DISEとも友好関係に有った為か、人気も高いunionだった。
「…‘償い’かな。私もよく分からないんだ」
そう言って笑ったリーダーに胸が痛む。
…償い。ずっと聞いてきた言葉だけど、こんな償いも有るんだ。
誰かの為に動くことだけが‘償い’じゃない。自分の持っている物を、築いてきた全てを捨てる――。それもまた、償い、なのかもしれない。
…レインもそうだった。‘回復術’という術を使用制限する事で、BLACK SHINEに入り人を殺してしまった事への償いを、詠っていた。

「影ながらだけど、君達の事は応援してるよ。…頑張ってくれ」
リーダーはそう言って棚から一枚の紙を持ってきた。それを渡され、思わず紙に書かれている事を確認してしまう。
「もし来たら渡そうと思っていたんだ」
…描かれているのはBLACK SHINEの内部地図だった。これが有れば今度は迷う事は無いだろう。レインやリネにわざわざ道を聞く心配も無い。
「…有難う御座います」
もう一度、今度は深々と頭を下げた。










BACK  MAIN  NEXT