「このまま島出ちゃうけど、問題ない?」
走りながら後ろを走っている筈の仲間に問い掛ける。
「俺たちは大丈夫だ!」
「…アシュリーちゃんが良いならねー?」
後ろからロアとレインの言葉が帰ってくる。…そういえば、無理矢理アシュリーの手を引いて走っていた。


*NO,20...疑惑*


「…良い?」
隣を走るアシュリーに問い掛ける。
…意外にも彼女はあっさり頷いた。ヘケトーが心配だから、とか。そういうコトを言うと思っていたのだが。
その心を悟ったのか、アシュリーが此方を見ながら言葉を投げてくる。
「…ヘケトーなら大丈夫よ。お父さんと良く剣の対峙をしていたし、簡単に負ける様な奴じゃない。
…私もよく島を出てるコトがあるし、暫く戻らなくても平気」
「…あ、そう」
質問したかった事の全てを回答されて、力なく頷いた。
里から大分走ったところで、海の音が聞こえてくる。――浜辺はもう近い。
このまま一気にスパートを駆けて…。そんな事を思っていたのも束の間。
「伏せろ!!」
セルシアが叫ぶのが聞こえた。
彼の言葉を聞いて反射的に体を屈める。その直ぐ上を魔術が掠めて行った。…まさか、もう追いつかれた?!
魔術の飛んできた方を確認する。
――其処には意外な人物が立っていた。



「……先に行ってて」
「…イヴ」
「2人は対峙したくないでしょ?――あたしがやる」
リネとセルシアの顔を見て、少しだけ笑う。――2人の顔は予想通り青ざめていた。
そのまま動けずに居るセルシアの手を、リネが引っ張って船へ走り出す。
「ちょ…リネ?!」
「…あたし達じゃ戦えないでしょ…」
「……」
リネの言葉にセルシアが唇を噛み締めて顔を顰める。走り出した2人を見て、ロアとレインが走り出した。
「行くぞ!」
状況を理解できないアシュリーを、イヴの変わりにロアが誘導する。
「…大丈夫?」
「大丈夫よ。直ぐにそっち行くから、出航の準備してて」
マロンが心配そうな顔をしながらも、ロアとレインを追いかけて走り出した。6人はそのまま真っ直ぐ船を目指している。
――出航の準備が整うのは、早くて5分か6分。
それまでにどうにかしてコイツを撒かないと。




「…あんた、リトとか言ったっけ?あんたがリネの兄なの?」

一度締まった剣を引き抜きながら、男――リトに向けて剣を向ける。
「……」
男はその問いに答えなかった。無言で大剣を抜き、彼女へ向かい切りかかる。
一撃目は何とか剣で防いだ。だが思った以上に力量が強い。簡単に剣が押し返されてしまう。
一度男から距離を取って、ポケットから魔弾球を取り出し投げ付けた。
傷付けるのは無理かもしれないが、姿を隠すのには使える――。
案の定発動された魔術が煙幕変わりとなって辺りを照らし散らす。
その隙にリトに向かって斬りかかった。
手ごたえは無い。変わりに金属と金属がぶつかり合う音が響く。――防がれた。
「――グラストアクア」
畜生。コイツも魔術士だったのか!!
発動された水の攻撃を間一髪でかわし、体勢を立て直す。
「人の質問には答えたらどうなのっ――!?」
動揺を狙うつもりで言葉を投げながらもう一度リトに斬りかかった。
再び金属が重なり合う。駄目だ、又防がれた。舌打ちするのとほぼ同時。リトが口を開く。
また魔術が来るか、と思い男と再び距離を置くが発された言葉は――問いの答えだった。



「そんな記憶存在しない」

――その言葉がやけに耳に残った。
それとほぼ同時だろうか。



「イヴ!!」
船からロアが自分を呼ぶのが聞こえた。船は既にゆっくりと動き始めている。
「…ったく、少しは気を使いなさいよ…っ!!」
もう一度魔弾球をリトに投げ付け、剣をしまいながら船に向かって全速力で走り出した。
船の梯子にどうにか捕まって、そのまま上の甲板に上がる。…何とか間に合った。
甲板に上がってから、暫くはその場で肩で息をし続けた。流石に全速力したから疲れた。


「大丈夫?!」
マロンが慌てて駆け寄って来た。
「…疲れたわ。正直」
その場を立ち上がり、客室に向かって歩き出す。とりあえず寝たかった。本気で疲れた。
「……あのさ、イヴ」
そんな彼女にセルシアが気まずそうに声を掛けてくる。…言いたいコトはなんとなく分かった。
「…‘そんな記憶は存在しない’だって」
セルシアにそう告げて、客室の扉を開ける。そしてそのまま部屋の固いベッドにダイブした。
リトの事とかこれからの事とか、色々考えたかったけど今はとりあえず休息だ。自分でも驚くくらい直ぐに眠りに付いた――。





「…でも、…本当に瓜二つ…だった……」
イヴが客室に入ってから、セルシアが眉間に皺を寄せながら呟く。
「…だから、そう言ったじゃない」
そんなセルシアに傍に寄って来たリネが俯きながら言葉を投げた。
セルシアが頭を抱えながら甲板のベンチに座る。

「…訳、分かんねえ……」
リネから離れた場所でセルシアが小さく呟いた――。










--It leads to Chapter U!!--



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